研究概要 |
γ-アルミナの耐熱耐水蒸気性向上を目的として、高温で安定なスピネルを形成する可能性を有する金属元素(Ni,Co,Mg_Zn)を添加し、高温水蒸気曝露前後のガス透過率変化、細孔径分布変化を測定した。これらの添加元素の中で最も有効だったのはNiであった。 これまでの研究結果から、中間層として使用されるγ-アルミナの耐熱耐水蒸気性の向上へはNiの添加が有効であること、分離活性層として使用されるアモルファスシリカの耐熱耐水蒸気性を向上させるにはシリコン原料へのシロキサン結合導入が有効である。水素分離膜全体の耐熱耐水蒸気性を向上させるためには分離活性層及び中間層それぞれの耐熱耐水蒸気性の向上と製膜プロセス、分離活性層及び中間層のマッチングが重要である。そこで、水素分離膜全体の耐熱耐水蒸気性向上について検討するためにNi添加したγ-アルミナ中間層上ヘシロキサン結合を有する有機金属原料にてアモルファスシリカ膜を製膜し、高温水蒸気曝露に伴う水素ガス透過率、水素ガス選択性の変化から高温水蒸気雰囲気における耐久性について検討を行った。 耐熱耐水蒸気性について対策前の水素分離膜は500℃、Steam/N_2=3の曝露条件において、アモルファスネットワークの緻密化によりネットワークを通過する水素透過率が減少した。また、γ-アルミナの細孔径変化により、N_2透過率が増減を繰り返した。一方、対策後の水素分離膜はγ-アルミナの耐熱耐水蒸気性向上により、膜欠陥を通過するN_2ガス透過率が安定化するとともに、原料へのシロキサン結合導入によるアモルファスシリカ緻密化抑制効果により、H_2ガス透過率の減少が抑制された。これらの曝露前後のガス分離データからガス分離膜としての耐熱耐水蒸気性向上のためには中間層の耐熱耐水蒸気性の向上がより重要であると結論づけられた。また、これらのデータをもとに水素分離膜の高温水蒸気雰囲気における劣化メカニズムに関するモデルを提案した。
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