広い波長域に対して透明であるメソポーラスシリカに、常識では考えられない光触媒機能のあることを見出した。新しい光・化学エネルギー変換材料となるため注目されている。この発現メカニズムを解明するとともに、揮発性有機化合物(VOC)の分解や、エタンおよびメタンから部分酸化によりアルコールを合成する光触媒としての応用を検討している。 本年度は、細孔径や細孔壁厚を厳密に制御したメソポーラスシリカを作製し、光触媒反応により分解される各種VOCの分子サイズと細孔径の関係を明らかにした。また、光触媒活性と紫外可視吸収スペクトルの関係について解析し、触媒活性に有効な吸収波長の傾向を明らかにした。さらに、細孔壁を疎水性や親水性に修飾した場合の触媒反応の違いについて検討し、光触媒活性に及ぼすシリカの形状、表面状態の影響について解析した。 メソポーラスシリカが親水性の場合、乾燥重量に対し同重量の水を吸着させても、トルエンやキシレンなどのVOCを吸着・光分解していた。光照射により生成したOHラジカルが吸着水の分子層を通ってメソポーラスシリカの細孔内に束縛されているVOC分子と反応し、光分解が起こっていることが示唆された。また、メソポーラスシリカの細孔内部をトリメチルメトキシシランで疎水性にした場合、トルエンとメチル基の反応物が検出された。メソポーラスシリカが反応場として作用している事を示している。 吸収、拡散反射スペクトルの測定より、メソポーラスシリカは光触媒反応の進行に有効な波長250~380nmの光を、完全に散乱・透過せず、細孔表面や内部で屈折を繰り返し起こし、それによって活性種が形成され触媒反応が進行したものと考えた。これらの光触媒反応は、酸化チタンやレーザ改質したものとは異なっていることを明らかにした。次世代アルコール製造技術として、また、従来の光触媒の活性向上のための知見として応用可能な重要な知見と考えられる。
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