アパタイト型イオン伝導体を中温型燃料電池(SOFC)用固体電解質として適用するために、高いイオン伝導性を持った薄膜の作製を試みている。平成20年度は、高イオン伝導性アパタイト型イオン伝導体(Mg添加ランタンシリケート)粉末を原料として、直流プラズマ溶射法による薄膜作製を行い、(1)作製条件による膜物性の変化及び(2)熱処理条件によるイオン伝導度の変化を観察し、(3)SOFCによる起電力測定を行った。 (1)原料粉末組成、プラズマ出力(電流-電圧)、プラズマガンの種類、供給ガスの種類・流量、ガンと基板の距離を種々変化させて膜の組成、結晶相、微細構造(粒径、緻密性)を観察した。その結果、高いイオン伝導を示す組成領域で、ポアの少ない緻密な微細構造を生成する成膜条件を見出した。 (2)上記の成膜条件でステンレス基板上に作製した溶射膜を還元雰囲気中で熱処理し、結晶相とイオン伝導の変化を測定した。その結果、高いイオン伝導度を示す熱処理条件を決定した。 (3)酸化ニッケルを主成分とする負極支持基板上に上記条件により溶射膜を作製・熱処理し、水素-空気によるSOFC発電実験を行った。溶射膜は600〜800℃の中温域で起電力を示し、固体電解質材料として適用できることがわかった。なお、電極支持基板上に作製したアパタイト型イオン伝導体薄膜でSOFCによる起電力の発生を確認した報告はこれまでない。 次年度は、電極材料を検討することによってSOFCの出力を向上させることを目指す。また、スパッタリングによる固体電解質薄膜の作製も試みる。
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