アパタイト型イオン伝導体薄膜を用いた中温型燃料電池(SOFC)の開発を行っている。平成20年度は溶射膜を用いた燃料電池セルを作製し発電に成功した。21年度は、セルの構成材料や作製条件を再検討し、高出力化を試みた。 (1)正極材料をPtペーストから鉄・コバルト系ペロブスカイト酸化物に変更することにより作動温度800℃での出力密度が57mWcm^<-2>から80mWcm^<-2>に増加した。低温では増加はさらに顕著であり、600℃では2.2mWcm^<-2>から22mWcm^<-2>へと10倍増加した。鉄・コバルト系ペロブスカイト酸化物電極では特に低温での活性が高いことが分かった。 (2)負極材料としては、酸化ニッケル-アパタイトサーメットを用いている。酸化ニッケル-アパタイト比や原料粉末の粒径を変化させたが特性の顕著な変化は見られなかった。電極材料の厚みを1.5倍に増加させても発電特性は変わらなかったので、厚い丈夫な負極支持基板を用いることが可能になった。 (3)大出力型の溶射銃による成膜を行った。大出力銃による成膜でも組成や微細構造には大きな変化はなかったが、成膜速度が大きいため生産性に優れている。 これまでに作製したSOFCの開回路電圧は0.90~0.97Vであり、理論値(1.1V)より小さい。これは膜に存在するマイクロクラックを介したガス透過のためであり、膜を薄くするとさらに電圧が低下する。本年度は、原料粉末と成膜条件によりマイクロクラックを低減し、膜を薄くすることにより高出力化を目指す。
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