アパタイト型イオン伝導体薄膜を用いた中温型燃料電池(SOFC)の開発を行った。平成22年度は溶射膜の組成・膜厚、基板の組成・粒径によるSOFCの出力の変化を観察した。 (1)アパタイト溶射膜の組成をMgドープからAlドープに変化させたが、開回路電圧および発電出力はMgドープの方が高かった。また溶射膜の厚さ50μmと100μmを比較すると、50μmの方が高い出力を示した。 (2)負極基板(酸化ニッケル-アパタイトサーメット)の組成を変化させた。サーメット中の酸化ニッケル成分が多い方が出力は高くなった。また、サーメット中のアパタイトの粒径を小さくすると、出力が高くなった。サーメット中に電子の流れる経路が有効に確保できたためと考えられる。 (3)発電状態でのインピーダンス測定を実施した。インピーダンス測定によりSOFCのオーミック成分と分極成分を分離して評価できる。電解質膜による出力の改善はオーミック成分、電極による改善は分極成分に表れた。 (4)これまでのところ、最高出力は測定温度800℃で150mWcm-2である。 (5)さらに低温でのSOFC作動を実現するため、スパッタリングによる電解質膜の成膜についても検討した。ランタンシリケート焼結体をターゲットとし、RFマグネトロンスパッタリングにより、各種基板に成膜し、結晶構造を検討した。成膜直後の膜は、アモルファスであったが、800℃以上で熱処理することにより、膜はアパタイト型に結晶化した。
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