研究概要 |
本研究では,強化材としてナノメートルオーダーの高強度ナノセルロース繊維に注目し,このナノ繊維と生分解性樹脂を組み合わせた新しいナノグリーンコンポジットの開発を行うことを目的としている.今年度は,植物パルプ由来のセルロースナノ繊維と植物由来樹脂(ポリ乳酸)を組み合わせたナノセルロース強化グリーン複合材料の試作とその強度特性評価を行った.その結果,ナノセルロース繊維と水分散型のポリ乳酸樹脂を複合化させたプリフォームを作製する際に,乾燥速度を適切な条件に調整することにより良好なプリフォームが得られることを見いだした.この手法を使用して作製したナノセルロース繊維を70wt.%含むグリーン複合材料の引張強さの最高値は159MPaとなり,従来のガラス繊維強化複合材料に匹敵する高い強度特性を有することが明らかになった.また,グリーン複合材料を試作する際の成形温度の影響についても調査した結果,調査した成形温度範囲(140-190℃)では,成形温度が高くなるにつれて強度が低下することが分かった.この原因として強化材であるセルロースナノ繊維が高温でのプレス成形中に熱分解してその強度が低下することが考えられる.このため150℃以上の温度での成形を避ける必要があることが分かった.
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