研究概要 |
平成20年度では金属ガラスの低温における機械的特性を調査した。鉄、クロムなど体心立方晶構造あるいはマグネシウムなど最蜜六方晶構造を有する多結晶金属では、低温で脆化(低温脆性)することが知られている。金属原子が不規則で乱れた状態で配列している金属ガラスが液体窒素温度(77K)のような低温で脆性を示すのかどうか、これまでのところ明確でない。低温における金属ガラスの機械的性質の研究は世界的に見ても緒についたばかりであり、このような現象を調べること自体意義があり、また金属ガラスの応用領域をさらに広げるためにも重要である。そこで, これまで調べられていないCu-Zr基およびNi基金属ガラスの低温域における機械的特性を圧縮試験により調べた。また、これらの弾性率の低温域における温度依存性を超音波法で調べた。その結果、以下のような結果を得た。 1. Cu_<45>Zr_<45>Al_5Ag_5およびNi_<60>Pd_<20>P_<17>B_3金属ガラスの圧縮強度および塑性ひずみは温度が低下すると共に増加した。低温で高強度と高延性が両立するという新しい成果を得た。特にNi基金属ガラスは77Kでの塑性ひずみの増加が著しく、室温の値に比べ約3.4倍となり、最大塑性ひずみ量は17.6%に達した。 2. 低温で破断した試料側面には多数のせん断帯が認められた。多数のせん断帯の発生とそれらの伝播の抑制が塑性ひずみの増加の原因と考えられる。 3. ヤング率、剛性率およびデバイ温度は温度の低下と共に単調に増大し、一方、ポアソン比は減少した。この結果は、温度の低下と共に金属ガラスの原子結合力が増加し、平均原子間距離が減少することを意味する。
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