研究課題/領域番号 |
20560644
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川嶋 朝日 東北大学, 金属材料研究所, 特別教育研究教員 (50005964)
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研究分担者 |
栗下 裕明 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50112298)
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キーワード | 金属ガラス / 機械的性質 / 腐食性水溶液 / 低温 / 引張強度 / 塑性伸び / 応力腐食割れ |
研究概要 |
一般に金属材料に引張負荷応力と腐食環境が同時に作用すると、協同効果を伴う擬脆性的破壊が生ずる。これを応力腐食割れ(SCC)と呼ぶが、これは材料の安全設計上重要な問題である。金属ガラス(BMG)の場合もその実用化および機能向上を推進するためにはSCC特性を調べ、その対策を立てることが重要である。しかし、これまでBMGのSCC特性に関する研究は極めて少なく、耐SCC合金の探査に関する研究は皆無である。したがって、このような現象を調べること自体意義があり、またBMGの応用領域をさらに広げるためにも重要である。そこでZr基BMGの種々の環境におけるSCC特性を調べた。また、世界的に見ても緒についたばかりである低温域(液体窒素温度、77K)におけるBMGの引張特性の測定も試みた。その結果以下のような結果を得た。 1.Zr_<50>Cu_<40>Al_<10>およびZr_<50>Cu_<30>Al_<10>Ni_<10>BMGは0.5M NaCl水溶液中で高いSCC感受性を示すが、脱イオン水、0.5M Na2SO4、0.5M NaNO3およびりん酸緩衝溶液中ではSCC感受性を示さない。 2.0.5M NaCl水溶液中でSCCを生じた両合金は引張軸に対してほぼ垂直に破断し、破面には脆性割れに特有なgranular、擬へき開およびShevron模様が認められた。孔食から割れが発生し、この腐食によって生じた水素が脆化に寄与していることが示唆された。 3.SCC感受性には明瞭な塩化物濃度依存性が認められ、0.001M NaCl以下では割れが生じない。 4.Zr_<50>Cu_<40>Al_<10>およびZr_<59>Cu_<31>Al_<10>BMGの引張強度および伸びは温度の低下と共に増加した。77Kでの両BMGの引張強度は室温に比べ、約18%増加した。塑性伸びは9~11倍増加した。引張試験で低温において伸びが増加したという事実はこれまで報告がない新しい結果である。
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