一般に金属材料に引張負荷応力と腐食環境が同時に作用すると、協同効果を伴う擬脆性的破壊が生ずる。これを応力腐食割れ(SCC)と呼ぶが、これは材料の安全設計上T.要な問題である。先年度では50原子%を含むZr基金属ガラス(50ZrBMG)が0.5 MNaCl中でSCCを生じることを報告した。今年度では耐SCCの金属ガラスの探査を行った。耐SCC合金の探査に関する研究はこれまでのところ皆無である。したがって、このような現象を調べること自体意義があり、またBMGの応用領域をさらに広げるためにも重要である。また金属ガラスは液体窒素温度(77K)で結晶質合金とは異なり、強度と塑性変形量が共に増加することを前年度に報告した。この原因を調べるため77Kで圧縮変形前後のせん断帯付近の構造変化を透過電子顕微鏡で調べた。以下のような結果を得た。 1.亜共晶Zr_<70>Cu_6Al_8Ni_<16>金属ガラスは0.5 MNaCl中でSCCを生じないことが判明した。これは世界で初めての発見である。この原因は50ZrBMGにくらべ、この合金の耐食性が大幅に改善された結果であると考えられる。 2.高分解能透過電子顕徹鏡(HRTEM)観察により、77Kで破断したBMGのせん断帯付近には3-5nmサイズの結晶粒子が認められた。この粒子は延性を示す而心立方晶(fcc)のPd-Ni固溶体相であることが判明した。 3.この微細粒子がせん断帯の伝播を有効に阻止して、低温における塑性変形彙の増加をもたらしたものと考えられる。
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