研究概要 |
本研究は、大きい超弾性回復歪みと高い超弾性変形応力を同時に発現する新たな生体用超弾性合金の開発を目標とした。本年度では、組成を系統的に変えたTi-Zr-Nb-(O,N)合金について、冷間加工後様々な条件で熱処理を施し、内部組織の観察、一定応力下で熱サイクル試験、負荷-除荷サイクル試験を行った。その結果、Ti-ZrNb-(O,N)合金において室温で超弾性を示す組成範囲が決定できた。超弾性変形応力はNbやZr濃度には大きく変化せず、酸素および窒素の添加により大きく上昇した。特に、窒素は超弾性回復歪みを減少させず、超弾性変形応力の上昇に有効であった。超弾性回復歪みの増加のためにはZr濃度を増加させると同時にNb濃度の減少が必要であるが、Nb濃度が減少するとω相が生成しやすくなり、超弾性の安定性は低下した。急冷時に形成された比熱的ω相は、マルテンサイト変態誘起応力を上昇させ、応力ヒステリシスを増加させることが分かった。また、Nb濃度の減少に伴い時効ω相の生成温度が低下し、373Kでも時効ω相による機械的特性の劣化が見られた。酸素および窒素の添加はω相の抑制にも有効であることが分かった。本年度の研究により室温で超弾性を示し、かつ回復歪みが大きいTi-Zr-Nb合金系の合金設計指針および加工熱処理条件を確立することができた。また、Ti-Zr-Nb系合金においてω相の抑制により更なる特性改善が期待できることが分かった。
|