研究概要 |
前年度は,新たな擬2元系化合物であるCa(LiM)2系(M=Ni,Mg)および(CaR)Li2系(R=Y,La)を作製して,その構造と水素化特性を調べ,室温において5~6mass%という非常に多量の水素と反応するが,反応後はCaH2,LiHなどに分解し,可逆的な水素吸蔵・放出特性が得られないことが分かった。 本年度は,典型的なAB5型水素貯蔵合金であるLaNi5とCaLi2との合金・化合物系を作製し,CaLi2の有する軽量性,水素との高い反応性,AB5型化合物との複合化および積層化の可能性を利用して,新たな高容量水素吸蔵合金を開発することを目的とした。 1.試料作製 CaLi2とLaNi5の単相試料をアーク溶解で作製したのち,両者をそれぞれ組成比9:1,1:1,1:9の比で秤量後,それぞれをアーク溶解法により合金化した。合金化後の目的試料を(CaLi2)_<1-x>(LaNi5)_xと表記する。作製後の結晶構造を粉末X線回折(XRD)実験により調べた結果,x=0.5ではCaLi2とLaNi5およびCaの混相が生成し,x=0.1ではLaNi5の回折線のみが観測された。一方,x=0.9ではアーク溶解の際に,溶解時の融解反応相からの蒸発が大きく合金化はできなかった。これは,CaLi2とLaNi5の融点(それぞれ230℃と1350℃)が大きく異なること,および両者の比重が大きく異なるためと考えられる。 次に,高周波溶解法により上記組成(x=0.5,0.9)の試料の合金化を試みた。溶解前にCaLi2とLaNi5を粉末化し,上記組成になるように秤量・混合後に加圧して,(φ3mm)×(t=2mm)の円柱状のペレットを作製し,これを加熱用のカーボンるつぼ中にモリブデン箔に包んでセットしてヘリウムガス1気圧中で高周波溶解を行った。温度や加熱時間の調整をいろいろ行ったが,両組成ともモリブデン箔と反応し,目的の新組成の化合物を得ることはできなかった。今後,カーボンるつぼのみでの作製,及び,ボールミリングによる合成を試みる予定である。 2.水素化反応装置の作製 スエジロック,電気炉,ターボポンプ等を使って,自作の水素化反応装置を作製して水素化を行った。
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