研究概要 |
本年度は,超軽量ラーベス相化合物CaLi_2(アルゴンアーク溶解で作製)を母合金とし,(1)これに,Ikeda^<[1]>等によって予測されたペロブスカイト水素化物の生成可能領域を参考にして,CaH_2,SrH_2およびBaH_2の試薬をそれぞれ等モル比で混合した粉末系について,水素中でのメカニカルミリング法とそれに引き続く熱処理を行うことにより,CaLi_2を用いた新規ペロブスカイト型水素化物の合成とその水素化特性の解明を試みた。(2)また,LaNi_5にCaLi_2を粉末混合した系を,アルゴンガス中でメカニカルミリングすることによって,両者による新規積層型化合物および両者が微細に複合化した試料の作製とその水素化特性の解明を試みた。 (1)については,それぞれ3MPaの水素ガス中で20時間のミリングを行った後,300℃または400℃で3MPa水素中3時間の熱処理を行った結果,わずかな不純物(CaH_2, Li, CaO)を含むものの,XRD測定において鋭い回折パターンを示す結晶性の良いペロブスカイト型水素化物SrLiH_3およびBaLiH_3が得られた。一方CaLiH_3は生成せず,この結果は上記Ikeda等の予測と一致した。次に(2)については,それぞれアルゴンアーク溶解で作製したCaLi_2とLaNi_5を,モル比1:1(試料A)およびモル比1:9(試料B)で粉末混合したものを,アルゴンガス0.1MPa中で12時間ミリングして複合化試料を作製した。XRD測定では,両試料ともにCaLi_2の回折ピークは消失し,ブロードで強度の小さなLaNi_5の回折パターンのみが観測された。現在,これらA, Bの試料について熱分析を行い,新たな積層物質を得るための熱処理温度の推定を行っている。また,本研究で得られたペロプスカイト型水素化物およびCaLi_2とLaNi_5による新規複合化化合物の水素化測定については,現在進行中である。 [1]K.Ikeda,S.Kato,K.Ohyama,Y.Nakamori,H.T.Takesita,S.Orimo:Scripta Materialia 55(2006)827-830
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