研究概要 |
平成20年度は主にラスマルテンサイトの組織解析を行った。用いた試料はFe-23mass%Ni合金とFe-0.2mass%C-2mass%Mn合金で、前者は1200℃で3.6ksのオーステナイト化を行った後に焼入れし全面ラスマルテンサイトを得、後者は340と12μmの粒径を持つ二種類のオーステナイトから得たラスマルテンサイトを使用した。これらの試料については透過型電子顕微鏡による転位密度測定は行っており、Fe-Ni合金では9.8×10^<14>m^<-2>、Fe-0.2C-2Mn合金の微細粒,粗大粒ともに1.6×10^<15>m^<-2>であることが分かっている。また、転位組織はともにラス内に転位セルを組んでいない転位が存在し、らせん転位が多い。X線回折では精度を上げるためできるだけ長時間かつ高次の回折まで解析に使用した。転位密度はWilliamson-Hallプロットにより得られた結晶子と結晶の歪から転位密度を算出する解析手法により求めた。その結果、転位密度はFe-23Ni合金では9.8×10^<14>m^<-2>、Fe-0.2C-2Mn合金の微細粒は1.5×10^<15>m^<-2>,粗大粒は1.7×10^<15>m^<-2>となった。透過型電子顕微鏡観察結果とよく一致した理由は、先述の測定手法に加え、従来あまり重要視されていなかった結晶子を用いたためと考えられる。しかし、Fe-23Ni合金の結晶子は転位間隔にほぼ等しいのに対し、Fe-0.2C-2Mn合金では転位間隔よりも結晶子が大きくなっている。また、X線回折を用いて転位の性格を決定したが、らせん転位と刃状転位の比率がほぼ等しくなり、透過型電子顕微鏡観察の結果と異なっていた。これらはX線測定の際、侵入型固溶元素やラスなど比較的粗大な組織の影響を受けたためと考えられる。
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