研究課題
酸化チタン薄膜における光触媒活性および光誘起親水性の支配因子を探るために、薄膜内部における電子構造に関する情報を得る手法として、Ti金属上に成膜した酸化チタン薄膜電極の光電気化学測定を行った。暗中でのサイクリック・ボルタモグラムにおいて、アノード分極時に電流はほとんど流れず、カソード分極時に電流が観察され、典型的なn型半導体の挙動を示した。また、波長がおよそ400nm以下の光照射によりアノード電流が観察され、アノード電位にて照射光波長350nm付近で測定された光電流密度はより高活性な試料ほど大きくなった。薄膜の光触媒性能と光電流密度に相関がみられたことから、光電気化学測定が薄膜の評価法として有用であることが確認できた。光起電力測定、および酸化物電極のインピーダンス測定から光照射下における各酸化物のフラットバンド電位および空間電荷層の厚さを計算し、酸化物内部のバンドの曲りを調べたところ、表面付近におけるバンド傾斜の大きさが光触媒活性および光誘起親水性、さらに光電流密度と良い一致を示すことが判明した。空間電荷層におけるバンド傾斜は光照射により生成された電子・正孔対を空間的に分離し、それらの再結合頻度を減少させると考えられる。表面形状および結晶構造に関する調査も実施したが、本研究で作製した酸化チタン薄膜においてはこれらの結果と光触媒活性および光誘起親水性には直接的な相関は見られなかった。酸化物薄膜表面付近におけるバンドの傾斜は空間電荷層領域におけるドナー密度に大きく依存するため、これらのファクターが酸化チタン薄膜の光触媒活性および光誘起親水性を支配する要因になっていることが示唆された。
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Proceedings of International colloquium on "Recent progress in nanofabrications of MEMS and NEMS : Science and innovation technologies"
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Proceedings of the 12th international symposium on material science and engineering between Kyushu University and Chonbuk National University
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