研究概要 |
Fe-Mn-Si合金を発展させた,Fe-Cr-Si-Mn-R系合金(R:希土類)の強磁性的性質と形状記憶特性の両方が共に優れた特性となる最適な組成,熱処理条件を明らかにするための検討を行った。飽和磁化の増加や加工性の向上のためには,形状記憶効果を維持しながらMn量を梅力下げる(CoまたはNiに置換)検討が必要である。これまでの検討で,Niは形状記憶効果と大きな相関があり,飽和磁化の上昇には寄与していないことを明らかにした。一方,Coは主に飽和磁化の上昇に大きく影響していると考えていたが,詳細な検討の結果,低Mn領域(2-4wt%)でCoは形状記憶効果と大きな相関があることが分かった。しかしながら,Co含有量を増して形状記憶効果を向上させると,飽和磁化が急激に減少した。合金のキュリー温度は400℃-500度で,オーステナイト変態終了温度の測定を行った結果では,強磁性のオーステナイト相が存在しており,複数の相からなっていると考えられる。 また,真空中での合金作製を行い,Crの添加量を削減して,磁気特性の改善を試みた結果,真空中で作製した試料の飽和磁化は僅かとなり,逆に優れた形状記憶特性を示した。空気中紡糸試料とは特性が大きく異なっており,結晶構造や変態点の測定を行い,今後比較検討を行って原因を明らかにする予定である。また,焼入れ油を使用して水との二層構造で,ワイヤーの作製を行い,これまでに比ぺて容易にワイヤー作製が可能となったが,磁気特性に関してはリボン材と比べて酸化の影響が大きく劣るのが現状である。さらに,リボン材の温度・応力・磁気特性の測定結果とそのモデリングを行い国際会議APSAEMで報告した。
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