研究概要 |
これまで,形状記憶合金複合材料の熱力学的挙動に対する解析結果の報告はあるが,強磁性形状記憶合金についての解析やモデル化はほとんど行われていないのが現状であった。そこで,強磁性形状記憶合金を回転機やアクチュエータ等に有効に利用するため,強磁性形状記憶合金の諸特性を測定して得た結果より工学モデルを構築し,数値シミュレーションに適用した。具体的には,強磁性形状記憶合金材料の磁化を応力,温度,磁界強度の関数によって表現するモデルを開発し,検証例として強磁性形状記憶リボンの温度と応力の影響を考慮した静磁場解析を行い,その有効性を示した。本研究の成果は昨年7月にシカゴで開催されたCEFC国際会議で報告し,2011年中にIEEE Transaction on Magneticsに掲載予定となっている。 また,新たに軟磁性層と形状記憶層の両方を持った二層薄帯の作製を行った。軟磁性層に使用する合金について,変形による磁気特性の劣化を防ぐために,磁歪がゼロであり,また高透磁率や低鉄損など極めて優れた磁気特性を有している6.5%Si-Fe合金を選んだ。形状記憶合金には軟磁性層と類似した組成を考慮してFe-Mn-si合金を用いた。二層薄帯の作製に最適な組成と液体急冷法で使用するノズル形状を検討した結果,Fe-Mn-Si合金にCrとBを,6.5%Si-Fe合金にBをそれぞれ添加し,最終的にFe-Mn-Cr-Si-B合金と6.5%Si-Fe-B合金で構成された二層薄帯の作成に成功した(特許出願中)。ノズルとしては,中央の仕切りが先端の噴射口を二分する型が適していることが分かった。本研究成果は2011年5月に台湾で開催される国際会議INTERMAG-2011(IEEE)にて発表予定である。
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