研究概要 |
金属材料の抗菌性評価については、JIS Z2891に基づいて21種類の金属(Al,si,Ti,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Zr, Nb,Mo,Pd,Ag,Sn,Ta,W,Pb,Au,Pt)について評価試験を行い、その結果を纏めた。この場合、菌と材料が接して24時間後の菌数の減少により評価する抗菌性の有無の他に、24時間以内での菌数の減少曲線から金属元素の抗菌性の強弱についても評価した。これによると、大腸菌および黄色ブドウ球菌の両菌に対して抗菌特性がある金属はAl,Co,Ni,Cu,Zn,Mo,Pd,AgおよびWの9つの金属であり、黄色ブドウ球菌には抗菌性を示さず大腸菌に対してだけ抗菌性を示した金属はPtおよびPbの2種類であり、黄色ブドウ球菌に対してだけ抗菌性を示した金属はVおよびZrの2種類であった。また、抗菌性を示さない金属はSi,Ti,Cr,Mn,Nb,Sn,TaおよびAuであった。更に、抗菌性の強い金属はCu,Ag,Coなどであった。以上のように数多くの金属元素について統一的にその抗菌性を明らかにした。これらの実験結果を基にすることにより、抗菌性が高く、機械的特性や加工性に優れる金属材料の開発に繋がるものと期待される。 各種金属材料表面におけるバイオフィルムの付着特性については、現在調査を進めているが、これまでの結果では、抗菌性の高い材料表面へのバイオフィルム付着量はやや少ない傾向にあること、また、抗菌性を示す材料表面では抗菌性を示さない材料表面と初期付着量では大差が無い場合にも、菌の生死判別の結果、死菌が多くバイオフィルムの急速な発達は起こらない可能性が高いことなどが分かってきた。これらの結果を総合することにより、微生物腐食のような微生物による害悪に強い材料開発に繋がるものと期待される。
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