本研究は、ナノ単結晶酸化亜鉛(ZnO)の集合体であるファイバ状の可視光動作光触媒の一部に銀(Ag)を添加したZnO(Ag)あるいは窒化ガリウム(GaN)を接合させてナノコンポジット化することにより、可視光動作光触媒に更なる機能を付加させることを目的とし、高機能化として可視光動作性を損なうことなく、(1)有機物(有害物質)の分解(反応)速度の向上および、(2)水の完全光分解の実現と位置付けて下記の成果を得た。 1.昨年度の成果として、熱処理温度を800℃に下げつつNH_3導入量を増やすことでファイバ形状を維持しつつジンクガリウムオキシナイトライド((ZnO)_<1-x>(GaN)_x)を得ることに成功したので、このファイバが有する有害ガス分解特性を、光源として波長405nmのLEDを、有害ガスとしてトルエン(toluene)をそれぞれ用い、封入式で評価した。ファイバ状(ZnO)_<1-x>(GaN)_x光触媒の有害ガス分解特性は、前駆体であるファイバ状ZnO光触媒のそれよりも劣ることが明らかとなり、有害物質の分解を司る活性物質(ヒドロキシラジカルなど)の生成量が低下したためと考えられる。 2.水の分解反応の際に不可逆的に作用するNi酸化物触媒の担持を実施した。スプレー熱分解法によるNi化合物(前駆体)の堆積および熱処理条件を検討して、ファイバ状のNiO/ZnO構造を得ることに成功した。NiOの担持により有害ガス分解特性は低減したが、担持量を最適化することにより、ファイバ状ZnO光触媒と同等の性能を引き出すことが可能であった。これは光触媒特性に乏しいNiOの被覆による影響が大きいものと解釈された。
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