研究課題
Nb-W合金はPd系合金と比較して10倍も高い水素透過能を有する。しかしながら、水素透過膜用Nb-W合金の設計において、高い水素透過能と耐水索脆性および耐久性を兼ね備えるための様々な最適条件については不明な点が多い。そこで平成21年度は、Nb-W合金の結晶組織および表面パラジウム皮膜の安定性に注目して研究を遂行した。Nb-5mol%W合金をアーク溶解して得られたボタンインゴットより、(1)加工・熱処理をせずに膜試料を作製、(2)圧延後、熱処理せずに膜試料を作製、(3)圧延・熱処理後に膜試料を作製と3種の試料を準備して水素透過試験を実施した。その結果、(1)の加工・熱処理をせずにボタンイゴットより直接膜献料を切り出した場合に最も高い水素透過速度が得られ、(2)の圧延加工をすることにより、やや水素透過速度が低下した。興味深いことに、(3)の圧延後に熱処理を施すと水素透過速度は著しく低下することが明らかとなった。これは加工・熱処理による再結晶化が原因であり、水素原子のトラップサイトとなる結晶粒界が増加したためであると考察した。一方、Nb-5mol%W合金の水素透過速度は試験時間の経過に従って低下することが明らかとなった。水素透過試験後の膜試料表面をSEM観察すると、膜表面のパラジウム層にはスポンジ状の孔が一様に形成されていることが明らかとなった。水素透過速度の低下が結果として表面皮膜の形態変化に現れていると考えられる。これはニオブ層とパラジウム層との相互拡散が原因であると予測し、相互拡散を抑制する目的で両層の間に酸化物層を形成した試料を用いて水素透過試験した。その結果、経過時間に対する水素透過速度の低下を抑制することに成功した。水素透過の分野では金属酸化物は水素を透過しないと理解されているが、実際には水素を透過することも明らかとなった。
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Proc.3rd International Conference on Structure, Processing and Properties of Materials 2010(SPPM 2010) (CD-ROM)
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