研究課題
Nb-W合金はPd系合金と比較して10倍も高い水素透過能を有する。しかしながら、水素透過膜用Nb-W合金の設計において、高い水素透過能と耐水素脆性および耐久性を兼ね備えるための様々な最適条件については不明な点が多い。そこで平成22年度は、Nb-W系水素透過合金膜の水素透過速度に及ぼす固溶水素濃度の影響と水素脆性破壊のメカニズム解明に目標を置いて研究を遂行した。アーク溶解した純NbおよびNb-W合金よりφ12mm×0.5mmの膜試料を切り出し、水素透過試験を実施した。膜中の固溶水素濃度と水素透過速度との間の関係を調べた結果、膜間の固溶水素濃度差が一定であるにも関わらず、膜中の固溶水素濃度が変化するに従い、水素透過速度も大きく変化することが明らかとなった。興味深いことに、固溶水素濃度の変化に対する水素透過速度の変化には極小点が存在した。この結果は、固溶水素濃度が増大するに従い、膜中の水素の拡散係数が複雑に変化していることを表している。したがって、フィックの法則に基づいた従来の水素透過能の解析方法では、水素透過反応を理解することができない。そこで、水素拡散の駆動力が膜間の水素の化学ポテンシャル勾配にしたがって拡散していると仮定し、拡散方程式を用いて水素透過速度を解析した。その結果、化学ポテンシャル勾配と水素透過速度との間に直線関係が成立することを明らかにした。
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