局所領域の力学特性評価手法において、主にTEMその場ナノインデンテーション技術を応用した研究を行って、鉄鋼材料の変形素過程解析を行った。Fe-Si双結晶を用いた解析では、粒内を運動する転位の挙動を観察し、易動度の低いらせん転位が多く残存していることから、変形抵抗はらせん転位の易動度によって支配されていることを明確にした。それらの転位とΣ51対称傾角粒界の反応を動的に観察したところ、粒界に向かってすべり運動をする転位は、粒界におけるパイルアップなどの挙動は確認されず、塑性変形が隣接粒内に伝播する様子が観察された。また、その場観察と同時に計測された応力-ひずみ関係においても、粒界を変形が跨ぐ瞬間に顕著な流動応力の上昇は認められなかった。この粒界は、結晶方位差が約24゜の大角粒界であるが、上述の結果は大角であっても大きなすべりの抵抗になるとは限らないことを示している。フェライト鋼への応用では、固溶炭素やリンを含む材料の挙動について、粒内に対する粒界の硬化量はリン添加材よりも炭素添加材でより大きいことが明らかとなった。
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