研究課題/領域番号 |
20560664
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
浅野 雅春 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (50370341)
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研究分担者 |
陳 進華 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (30370430)
吉田 勝 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 嘱託 (20354938)
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キーワード | 燃料電池用電解質膜 / 光グラフト重合 / イオンビーム照射 |
研究概要 |
平成20年度は、ひも状グラフト鎖創製のための膜内部への微小構造を形成させるため、イオンビーム照射技術を検討した。また、ひも状グラフト鎖の導入には、その微小構造の損傷域に対して、優先的にグラフト重合を起こさせる必要があり、温度、溶媒組成などのグラフト条件を変えることにより検討した。スルホン基保持可能な疎水性スチレンを溶かす溶媒として数ある中からケトン系のアセトンを選択し、水の存在下で光増感剤を塗布したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)にUVを照射したところ、グラフト重合が進行することが分かった。このグラフト重合における水/アセトン混合溶媒組成は、5/1比でグラフト重合速度が最も高くなることが判明し、時間とともにグラフト率も増加することが分かった。グラフト重合条件が明らかになったので、次にひも状グラフト鎖創製のための膜内部への微小構造を形成させるためのイオンビーム照射技術を検討した。イオンビームは、イオンを高速に加速させた荷電粒子線であり、電子線や電磁波であるX線・γ線に比べ透過力が低いものも、物質に対し局所的に非常に高いエネルギーを付与できるのが特長である。このため、例えば高分子膜にイオンビームを照射すると、個々のイオンの飛跡に沿って電離と励起反応が高密度に起こり、それに伴い高分子鎖の架橋や分解が引き起こされることが知られている。局所的にエネルギー付与されたこの領域をイオントラックと呼び、高分子の種類、照射するイオン種やエネルギーにより、直径を数十から数百ナノメートルの範囲で変化させることができる。56MeVのNイオンでの57nmの潜在飛跡領域に対し、450MevのXeイオンでは216nmまで大きくなることが分かった。このように、潜在飛跡の大きさが制御できることから、その領域に優先的にグラフト鎖を導入できれば、異方伝導性をもつ電解質膜の作製が可能と思われる。現在、イオン照射と光グラフト重合を組み合わせた電解質膜の作製を進めている。
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