成果1.ステンレス鋼製セパレータのコスト低減とプロトン導電膜のニッケルイオンによる汚染回避を図るため、ニッケルを含まない高純度フェライト系ステンレス鋼に注目してその耐食性を評価した。19Cr-2Mo鋼と22Cr-2Moを比較した結果、19Cr-2Mo鋼で試作したセパレータではセル電圧の降下が大きく、発電試験後に腐食痕が認められた。一方、22Cr-2Mo鋼は電圧降下速度が小さく、腐食は認められなかった。また模擬環境中における電気化学試験の結果、22Cr-2Mo鋼の耐食性はオーステナイトステンレス鋼であるSUS316鋼と同等以上であることがわかった。このことから、22Cr-2Moの高純度フェライトステンレス鋼が有望なセパレータ候補材料であることが示された。 成果2.発電試験中の燃料電池セルの劣化度合いをその場評価する手段として交流インピーダンス法が期待されているが、セパレータの腐食がセルインピーダンスに対してどのように反映されるかについてこれまで報告されていなかった。そこで、比較的腐食しやすいSUS430ステンレス鋼をセパレータ材料として選び、発電に伴うインピーダンス変化を調査した。セルインピーダンスは典型的にふたつの緩和過程からなり、それぞれカソード反応抵抗と物質移動抵抗に対応すると推定された。セパレータの腐食は後者の抵抗を増加させたことから、腐食生成物がガス拡散層内の反応ガスまたは生成水の移動を抑制していると推定された。これらの結果、交流インピーダンス測定が燃料電池セルにおけるセパレータの腐食評価に有効である可能性が示された。
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