研究概要 |
本研究では,応力腐食割れ(SCC)などの環境劣化割れ機構を解明するために,応力印加による腐食損傷を評価するダブルサンプル-スプリットセル法(DSSC法)を確立することを目的としている.このDSSC法をステンレス鋼の応力腐食割れなどの環境強度評価に適用することで新たな切り口から環境劣化割れ機構の解明を目指している.本年度は,MgCl_2水溶液中における鋭敏化304ステンレス鋼の局部腐食発生および腐食ピットからき裂への形態変化におよぼす応力の影響について,予ひずみを印加した試験片のアノード分極曲線,局部腐食やき裂の表面観察,腐食電位および無負荷-負荷試験片の短絡電流ノイズの測定結果から検討した.その結果,予ひずみを与えた鋭敏化ステンレス鋼のアノード分極挙動より,塩化物イオン濃度など環境条件が整う必要があるものの,予ひずみの印加によって局部腐食の発生が促進されることが示された.次いで,電位ノイズおよび短絡電流ノイズの測定から,動的引張応力もしくは予ひずみの印加により,孔食萌芽の発生頻度が高くなり,成長性局部腐食の発生が促進されることがわかった.ただし,不働態皮膜の破壊と修復の繰り返しから成長性の局部腐食の発生に至るには,塩化物イオン濃度などの環境因子の影響が大きいことが示唆された,最後に,局部腐食形態については応力の影響があり,成長性の局部腐食が生じている状況で引張応力が印加されると,局部腐食の形態がピット状からき裂状の溶解痕に変化することが示された.以上により,ステンレス鋼の応力腐食割れおよび局部腐食挙動に対する応力の影響を調査し,本研究の目的を達成することができた.
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