本研究では、安定した裏ビードと溶込み形状を得ることが可能なスイッチバック溶接法について、中厚および薄厚板の片面突合溶接においても有用であること示すため、(1)スイッチバック動作時の溶融池形状の遥動現象のメカニズム、(2)開先幅や板厚などの変化に対する最適なスイッチバック条件、(3)スイッチバック溶接の高速化方法等について検討する。平成20年度は、スイッチバック溶接のシミュレーターおよび実験システムを開発し、これを用いて溶融池形状の遥動(動的変化)とスイッチバック動作のメカニズムを検証し定量的な関係を解明した。 トーチを溶接進行方向の前後に揺動し入熱と放熱を制御するスイッチバック溶接法において、動作パラメータ(前進距離、後退距離、前進速度、後退速度、平均速度)と裏溶融池形状(長さ、幅、隣接溶融池との重なり)の関係を数値シミュレーションにより解析し、有効使用可能範囲を示した。また、従来溶接との熱変形量比較や突合せ開先のギャップ変動特性についても検討し、スイッチバック溶接法の有効性を確認した。溶接平均速度の高速化のためのスイッチバック動作および入熱制御方法について検討し、その可能性について示した。このとき使用するアーク長検出・制御方式についても検討し、ニューラルネットワークを用いた高精度なセンサシステムを構築した。 平成21年度は溶接実験により高速化手法の検証を行うとともに、下向き溶接以外の溶接姿勢への適用について検討する。
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