本研究では、安定した裏ビードと溶込み形状を得ることが可能なスイッチバック溶接法について、中厚および薄厚板の片面突合溶接においても有用であること示すため、(1)スイッチバック動作時の溶融池形状の遥動現象のメカニズム、(2)開先幅や板厚などの変化に対する最適なスイッチバック条件、(3)スイッチバック溶接の高速化方法等について検討する。平成22年度は、前年度シミュレーションから得られたスイッチバック溶接の3つの有用性((1)裏溶融池が溶接進行方向に短いため開先幅が変化しても溶落ちにくい、(2)裏溶融池最大時にアーク熱源は前方に遠ざかっているためアーク長変動などの外乱に強い、(3)溶融池形状が周期的に変化するため溶融池内の対流による深さ方向の溶融が制限できる)をCO_2溶接実験によって確認した。この結果、3.2mm板厚のワークに対し0~3mmの開先幅に対し溶落ちのない完全溶け込みの溶接ビードをスイッチバック溶接により得られることを実証した。これは溶接中のワーク変形などによる開先幅変動時にも従来溶接よりスイッチバック溶接が有用であることを示している。また、本年度はスイッチバンク溶接を薄板のチタンやマグネシウム合金など軟鋼以外の突合せ溶接にも適用する開発を行った。チタンやマグネシウム合金溶接においても、軟鋼板と同様にスイッチバック溶接よりアーク長の外乱などの影響に関わらず安定した裏ビードを得ることができている。チタン溶接では溶接作業の高能率化のためにMIG溶接を適応したときに発生する表ビードの曲がりに対し、スイッチバック溶接が有効な解決策となることも示した。
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