超臨界二酸化炭素流体(scCO_2)の繊維関連への応用研究は1991年のドイツにおける繊維の染色用の媒体として利用する研究から始まった。我々はこの原理を応用し、繊維内部への染料以外の機能性物質の注入・固定について研究し、従来にない新規な機能加工が可能であることをできることを見出してきた。この一連の研究において、scCO_2に有機金属錯体を溶解させ、この浴で繊維を処理することで繊維内に錯体が注入・固定され、これを還元すれば、繊維内で金属が析出し、これを核として容易に無電解メッキできることを見出した。めっきの厚さはめっき時間を制御することで増加することが可能で、また従来のメッキまたは金属化に比べ接着強度が格段に向上することを確認している(下図参照)。 [figure] しかし、この方法は全ての繊維・高分子材料に万能ではなく、高ヤング率、高弾性、高ガラス転位温度を有する高分子、高結晶性、高配向性繊維などはめっきが容易でない。 本研究では超臨界二酸化炭素流体を用いる高分子材料及び繊維のめっきをより簡単にまた高いめっきの密着強度を得る方法の確立を目指している。芳香族ポリアミド(アラミド)繊維やポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維の他新しい電子基板材料として注目されるポリイミドプレートなどを対象に、これらの優れた物理物性に加えて、従来の送電用電線にとって代わる導電性ワイヤー、新規電気抵抗体(発熱材料)、さらには電子基板への応用展開を目的に、研究を展開する。
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