研究概要 |
層状構造を有するNa_x、Co_2O_4系化合物では,溶液プロセスでの相形成時に,結晶構造を反映した扁平形状の前駆体粉末を生成する傾向があった.また,その錯体形成時に,三次元のネットワーク構造を経ないクエン酸錯体法が,錯体重合法による粉末合成よりも,アスペクト比の高いプレート状粉末の合成に効果的であった.これを常圧焼結することにより,配向度が0.9という高い配向性が得られたため,さらなる高性能化のため,電気抵抗率を低減させることを目的にAgを添加した試料合成を試みた.熱伝導率の上昇を抑制するためメカニカルグラインディングによりAg相の微細分散を試みたが,焼結時に粗大化し,電気抵抗率は低減するものの熱伝導率が上昇し,結果的に熱電性能は劣化した.そこで溶液析出法によりAgをナノメーターレベルで析出させたところ,焼結時の粗大化を効果的に抑制,熱電性能の向上が可能となることを明らかにした. n酸化物であるSrTiO_3系では,Yをドープした錯体重合法粉末に対し,パルス通電焼結法による固化成型を試みた.その結果95%程度の高い焼結体密度が得られ,溶液プロセスを利用した高密度焼結体の合成が可能となることを明らかにした.また,電気抵抗率低減による出力性能向上のため,良導体であるTiB_2を添加し焼結を試みた結果,良好な2相複合体の合成に成功するとともに,著しい電気抵抗率低減を実現,出力因子を大幅に向上することに成功した,さらにTiB_2添加により焼結時の緻密化が生じる温度が大きく低温化し,パルス通電焼結法との組み合わせにより,固化成型プロセスを著しく低温化できる可能性が示唆された.
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