研究概要 |
本年度では,TiB_2粉末を添加したSrTiO_3粉末の焼結挙動を詳細に検討することにより,前年度までに明らかにした,パルス通電焼結におけるTiB_2粉末添加による緻密化温度低下および電気抵抗率低減効果について,そのメカニズム解明を試みるとともに,他の酸化物および焼結手法への適用範囲を明らかにすることを試みた パルス通電焼結における緻密化挙動がTiB_2の低電気抵抗率による可能性について,AgやCuの添加を試みた結果,緻密化温度の低減効果がみられなかった.よって本効果はパルス通電焼結法に特有の現象ではないことが示唆され,ホットプレス法や常圧焼結法への適用を試みた結果,緻密化温度低減効果がみられ,本手法が広く一般の焼結プロセスに適用可能であることを明らかにした.また,他の酸化物として,BaTiO_3やY_2O_3を用いた場合でも同様の焼結挙動を示すことを確認した.また焼結機構については,焼結途中でTiB_2が反応により消費されている可能性が示唆された.そこでTiB_2添加したSrTiO_3の電気抵抗率を測定し,粒子分散型複合則による理論値と比較を行ったところ,単純複合効果以上に電気抵抗率が減少していることが明らかとなった.これらの結果から,SrTiO_3のOとTiB_2のBが反応することで酸素欠損が導入されることが推測された.TiB_2とSrTiO_3の反応に伴う副生成物としてB_2O_3が考えられたため,SrTiO_3にB_2O_3粉末を添加した試料を焼結したところTiB_2粉末を添加した場合と同様に緻密化温度の低下が観察された.以上の結果から,焼結中にSrTiO_3とTiB_2が反応することによりB_2O_3相が形成され,緻密化温度が低減されると同時に母相中に酸素欠損が導入されることにより単純複合化以上に著しい電気抵抗率の低下がもたらされたとの結論を得た
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