本年度は、昨年度に引き続き密着強さの検討、クラッド材の組織と特性について調べた。SPCC基材をブラスト処理してAl粉末(45~10μm)を用い、予備成形(5kN)および圧延(圧下率40%)によりクラッド材を得た。ノッチ付きせん断試験片を作製し、クラッド層をせん断はく離した。圧延したままで40MPaのせん断密着強さを示した。一方、773Kで1hr加熱すると、せん断密着強さは10MPaに低下した。基材/クラッド層断面を光学顕微鏡で観察すると、界面に異相が観察された。この異相は金属間化合物であると推察される。この異相の生成が密着強さ低下に大きく寄与していると考えられる。また、クラッド材の陽極分極挙動を、0.1MNaCl水溶液を用いて調べた。陽極分極測定の比較試料としてAl050P板(工業用純アルミ)および純Alインゴットを試料とした。クラッド材は、粉末表面に僅かな酸化膜およびクラッドによる残留応力などが起因して、純Alインゴットよりも不動態域が小さくなったのではないかと推察される。さらに、大気中の773および1073K加熱における、組織および酸化増量について調べた。比較材として、SPCC材およびFC200相当材の生材を用いた。組織観察の結果、1073KではAlの融点を超えているのでAl層は溶融して基材と合金を生成し、表層にはボイドが観察された。合金層には濃淡のある少なくとも2種のコントラストが見られた。XRDによる相分析では、圧延したままおよび773Kの試料はAlによる回折ピークが見られ、1073KではAlのピークは消失しAl_2Fe_5およびAlFe相によるピークが出現していた。したがって、合金層のコントラストは、この2種類の金属間化合物によるものと考えられる。各温度で10h加熱保持した場合、クラッド材においては、SPCC材に対するクラッド層による耐酸化の効果が認められた。また、1073Kにおいてはその効果が顕著であることが示された。
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