最終の今年度は、引き続き被覆層の特性および熱処理による組織や特性の変化について調べた。Al-Ni混合材は、1073KではAl層は溶融してNiおよび基材と合金を生成し、XRDによる相分析では、化合物相としてはNi_2Al_3およびNiOによるピークが出現した。10h加熱保持した場合、クラッド材においては、SPCC材に対するクラッド層による耐酸化の効果が認められ、自動車部材への適用が期待される。純Tiでは、大気中の600℃で1h加熱後、クラッド層はTiと小さなTiO_2(ルチル)の回折ピークが見られた。熱処理により、大気中の酸素と反応してTiO_2が生成したと考えられる。熱処理後のTiバルク板材はクラッド材と同様に、Tiと小さなTiO_2(ルチル)の回折ピークが見られた。光触媒作用の確認実験では、バルク材の方が分解速度が大きくなったが、TiO_2の生成量は回折パターンから推察するとクラッド材の方が多いと考えられる。これは、生成したTiO_2の体積率は、クラッド材の方が大きいが、一方バルク材の方はTiO_2の生成量は小さいが、表面積はクラッド材よりも大きいために、この様な結果となったのではないかと考えられる。純Cu、純Snは、導電性材料として電子デバイスに使用されている。Cuについては熱伝動率、電気抵抗、Snについてはウィスカの生成について調べた。Cuクラッド層は、純金属板と比較すると非常に低い熱伝導率を示した。このことは、粉末粒子間に生成する空隙に起因するものと考えられる。Snのクラッド層では、加温処理後ノジュール状のウィスカの生成が見られた。耐熱被覆材、機能性被覆材として種々のクラッド材を生成することができ、クラッド層を構造設計することにより多様な特性を付与できると考えられる。
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