研究概要 |
本研究では摩擦にともなう結晶粒微細化現象を単純化するために銅単結晶を用い,複雑な摩擦を受ける表面の粒界形成の過程を調査することを目的とする.表面方位(001)の銅単結晶を用いて摩擦試験を実施した.2回目の摩擦は1回目の摩擦痕に摩擦方向が90゜および180゜で交わるようにした.試験後,摩擦面に垂直な面で切断し,断面をECC法およびEBSDで観察および解析を行った.表面に摩擦を加えると,表面直下部では微細粒組織が形成されていた.表面から3μmより深い位置では,2回の摩擦が180゜に交差する場合で,比較的微細な結晶粒が形成された.EBSD法で得られた結晶の回転角から,geometrically-necessary(GN)転位の密度を見積もった.本研究では,深さ方向をx軸,第1回目の摩擦方向をy軸とそれぞれ定義した.表面近傍での転位密度を比較すると,180゜で交差する場合には,各種転位密度が他の交差比べ低くなった.これは,2回目の摩擦によって逆向きの符号の同じ転位が供給されたことによる対消滅および,逆向きの摩擦によって1回目の摩擦により導入された転位の低エネルギーな転位の表面上への表面方向への移動が起こり,再配列が促進され,粒界が形成されたためと考えられる.2回目の摩擦が90゜で交わる場合では,異なるすべり面上の転位が供給され,再配列による転位同士の交切を形成し,転位密度の減少もおこらず,また,粒界の形成には至らなかったと考えられる.また,交差しない領域に形成される粒界をEBSD法で詳細に調査した結果,摩擦面に平行な大角粒界は摩擦にともなう結晶の回転が原因であったが,表面のごく近傍の等軸状結晶粒は再結晶が原因であると結論づけられた.
|