研究概要 |
耐水蒸気酸化性アルミナ生成耐熱合金開発にとっての基礎的知見を得るため,Fe-20Cr-4Alを基本合金とし,これに白金を添加した合金の酸素-水蒸気(47vol%)雰囲気中1673K,18ks間の高温酸化実験を実施した。これらの合金のスケール表面から合金内部にわたる断面をSAICAS(表面・界面切削)装置により切削し,その界面をSEMを用いて観察した。この装置は鋭利なダイヤモンド切刃を用いて,被着体の表面から界面にかけて切削し,界面で剥離する装置である。一方,著者はこれまでの研究からアルミナスケールの剥離が18ks間酸化では特に1573Kという酸化温度からの冷却中で著しいことを見出してきた。このスケールの剥離を詳細に検討するためFe-20Cr-4Alを基本としてこれに微量のイットリウムを添加した合金について酸素-水蒸気(47vol%)雰囲気中,1573Kで18ks間を1サイクルとして5サイクルまでのサイクル酸化実験を実施した。以下に得られた結果を示す。 1 SAICAS装置によるスケール/合金界面の切削面のSEM観察より,スケールの密着性の悪かった基本合金ではスケールは合金表面に密着していない領域を多く含むことを明らかにし,このことが冷却過程におけるスケール剥離へと導くものと考えられる。一方,スケールの密着の良好な0.5Pt合金ではスケール/合金界面が入り組み,かつその領域では空隙もほとんど認められなかった。 2 基本合金のサイクル酸化では5サイクルまで各サイクル後にスケールは剥離し,サイクル数の増加とともにその剥離酸化物量は低減した。一方,0.5Y合金ではいずれのサイクル後でもスケールは剥離せず,この合金ではスケール中に点在するY_3Al_5O_<12>粒子が合金中にくさびの様に突き出すいわゆるkeying効果によりスケールの密着性が改善されるものと考えられる。
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