長さ1.8mm、φ4mmのプローブを底面に有するφ12mmの円筒状のツールを用い、ツール回転速度500〜5000rpm、ツール移動速度50mm/minの条件でAZ31マグネシウム合金に摩擦攪拌プロセスを施した。当該処理により、ツール回転速度3000rpm以上の高速回転領域において、100nm〜数十μmの結晶粒が混在したバイモーダルナノ組織が得られたが、目標としている100nmの結晶粒を広域に形成させるまでには至っていない。超塑性挙動を評価する為には、結晶粒微細化領域を均一に広い断面積(φ4mm〜程度)で得ることが必須であり、摩擦攪拌プロセスに用いるツールの形状及び摩擦攪拌プロセス条件を更に検討する必要がある。今回用いたツールでは、断面積が〜φ2mm程度の攪拌領域しか形成されなかった為、(1)プローブ径を大きくする、(2)複数回の摩擦攪拌プロセスを行う(マルチパスプロセス)、の何れかのアプローチが必要である。 本研究の目的である低温・超高速超塑性の発現には若干の課題が残っているが、高回転速度(3000rpm以上)の摩擦攪拌プロセスで100nm〜数十μmの結晶粒が混在したバイモーダルナノ組織が得られるという新規な知見を得ることができた。一般的に摩擦攪拌接合は2000rpm以下の回転速度で行われる為、それ以上の回転速度領域で処理した場合の組織変化はほとんど研究されていなかった。バイモーダルナノ組織は高強度と延性を両立することができる組織として注目されており、本年度の結果は金属材料に関する組織制御の観点からも意義深い。
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