研究概要 |
ギガヘルツ帯の高周波領域を利用する送受信機に組み込まれるプリント基板には、優れた高周波低損失特性が必要であり、基板材料には誘電特性に優れるふっ素樹脂が適している。今後、電子機器の更なる小型化・高密度実装化を図るうえから、ファインパターンの実現が求められており、ふっ素樹脂表面に数マイクロメータ厚の銅薄膜を形成させる必要かおる。銅薄膜形成の量産化には、無電解銅めっきプロセスの採用が望ましい。本研究では、ギガヘルツ帯プリント回路基板の開発を目的として、紫外レーザー照射と大気圧プラズマ処理を併用した表面改質をふっ素樹脂フィルムに施すことによって、銅めっき薄膜の密着強度が向上するかを検討する。本年度では、次の成果を得た。(1)ArFエキシマレーザ(λ=193nm)を用いて照射光学系を試作した。紫外レーザー照射処理を行った結果、ふっ素樹脂フィルム表面に効果的な投錨効果を得られる微細な凹凸の創成を確認することができた。なお、凹凸の創成頻度を高めるために、レーザー照射後光解離したC-F結合の再結合を抑制する手法として、照射エネルギー量の増大、水素ラジカルの存在等の必要性が考えられた。(2)誘電バリア放電方式の電極ユニットを内蔵する大気開放型大気圧プラズマ処理装置を試作した。有機溶媒を混合した反応ガスを供給して大気圧プラズマ処理を行った結果、ふっ素樹脂フィルム表面には親水基(-COOH,-C-OH)の出現が認められ、その特性が7日間経過した後も維持されることが分かった。以上、ふっ素樹脂の表面改質に関する物理的・化学的な基礎データを得ることができた。次年度は、銅めっき薄膜の密着強度を向上させるべく表面改質の処理条件を精査する。
|