本研究は、ギガヘルツ帯プリント回路基板の開発を目的とする。フッ素樹脂基板に紫外レーザー照射と大気圧プラズマ処理を併用して表面改質を施すことにより、フッ素樹脂基板/銅薄膜界面の平滑性を保った状態で、フッ素樹脂基板と銅薄膜との密着強度が得られるように検討した。フッ素樹脂基板にはPTFEシートを用いた。本年度は、前年度に得られた知見を基づいて、以下に示すPTFE表面への銅メッキ薄膜形成プロセスを構築した。 (1)PTFEシート表面に大気圧プラズマ処理を施して親水化した。使用したプラズマ発生装置は完全大気開放型であるため、プラズマ発生領域に大気が混入しないよう遮蔽板を設置した。 (2)PTFEシート表面に2種類のアミノシラン剤(3-aminopropyl)trimethoxysilaneならびに3-(2-aminoethyl)-aminopropyltrimethoxysilaneの自己組織化膜を気相法により成膜した。(3)PTFEシートを無電解めっき前処理溶液(アクチベーター:PdCl2水溶液)に浸漬させて、Pdイオンをアミノシラン自己組織化膜の末端官能基であるアミノ基に化学吸着させた。(4)PTFEシートを還元剤であるDimethylamine Borane溶液に浸漬させて、自己組織化膜のアミノ基に吸着するPdイオンを還元させた。(5)PTFEシートを市販の無電解銅メッキ溶液に試料を浸漬させて、PTFEシート表面に銅メッキ薄膜を成膜させた。 得られた銅メッキ薄膜の密着試験を粘着テープのクロスカット剥離試験により行った結果、剥離部位は全く観察されなかった。また、PTFEシート表面にアミノシラン自己組織化膜を成膜した後、パターニングしたマスク材を介して紫外レーザーを照射することで、回路不要部分の自己組織化膜を除去して、無電解銅メッキ薄膜を回路パターン状に成膜することができた。これにより、フルアディティブ法による回路パターンの成膜技術を構築した。
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