研究概要 |
本年度はAl-Ti-B系合金添加剤によるAl鋳造材組織微細化のための鋳造条件最適化と微細化挙動および切削屑を利用したAl鋳造材の結晶粒微細化に関して集中的に研究を行った.前者の研究により,1)Al-5%Ti-1%B添加剤内の,Al_3Ti粒子の大きさによって,Al鋳造材の最適な鋳造条件が変化した.最も微細化した条件はワイヤタイプの添加剤を用いて,保持時間が0.5分であった.2)Waffleタイプでは保持時間が2.5分以降から,ワイヤタイプでは保持時間が1.5分以降からフェーディング現象が見られた.3)ビッカース硬さ試験では,最も微細化したワイヤタイプの保持時間が0.5分において最も高い強度を示した,という結論を得た.また,後者の研究により,以下の結論を得た.1)切削屑を溶解炉で溶解させず,あらかじめ金型内部に投入して鋳造を行うことで結晶粒微細化が可能であることを見出した.2)機械的性質の評価として摩耗試験を行った結果,結晶粒は微細化されているが摩耗量が増加した.これは切削屑の投入量を多くした場合,凝固の際に投入した切削屑と溶湯との間に空隙が生じてしまったためと考えられる.3)この現象を緩和するために金型及び切削屑を予熱した状態で再び鋳造を行った.その結果,予熱を行っていない試料よりも結晶粒が粗大化してしまったが,摩耗特性を改善することができた. これらの結論を元に,最終年度において,鋳造時に一般的に用いられている結晶粒微細化剤の微細化機構を究明し,その成果を元に材料設計技術と機能設計に基づき新規結晶粒微細化剤を提案する予定である.
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