研究概要 |
鉄鋼業では副産物としてスラグが恒常的に排出されており,未利用のスラグは製鉄所内で野積みされたままの状態になっている.本研究では,炭酸溶液中に製鋼スラグを浸漬し,有価な鉄,亜鉛,マンガンなどを抽出するとともに,重金属などの環境規制物質抽出によるスラグの無害化を主目的とした.スラグの溶出試験は,JIS K 0058-1(2005)スラグ類の化学物質試験方法一第1部 溶出量試験方法「利用有姿による試験」に準じて行った.実験には電気炉普通鋼溶製時に生成する電気炉酸化スラグを使用した.実験は初期pH,粒度および二酸化炭素分圧(0〜1気圧下)を変えて行った.水溶液には,淡水と人工海水を使用した. 淡水および人工海水への溶出量調査から,電気炉酸化スラグ中の環境規制物質の溶出量は土壌の汚染に係る環境基準と海洋汚染防止法水底土砂基準環の基準値を下回っていた.閉鎖的な水域に大量のスラグを投入した場合,pHと亜鉛の溶出量が水質汚濁に係る環境基準を超える可能性がある.マグネシウムの溶出量の経時変化は放物線則で表された.また,全般的に見て,カルシウムのそれは放物線則,シリコンのそれは直線則で表された.初期pHの増大とともに溶出速度は低下する傾向がある.溶出時のpHは溶出初期に約9.5まで増大した後,約8.5に低下し,スラグは干渉作用を示す.二酸化炭素分圧の上昇とともに溶出量は増大した.スラグ中酸化鉄,酸化マンガンおよび酸化アルミニウムはほとんど溶出せず,溶出残渣として分離できる可能性を見出した.
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