研究概要 |
鉄鋼業では製,精錬に不可欠なスラグが恒常的に排出されている.スラグは酸化アルミニウム,酸化カルシウム,酸化シリコンなどのほかに,鋼種などにより酸化鉄や酸化マンガンが大量に含まれるものや,酸化クロム,酸化亜鉛,セレンなどの環境規制物質が含まれているものもある.酸化鉄や酸化マンガンなどは製錬原料として有用である.環境規制物質はスラグの再利用を妨げているので除去すべきものであるが,見方を変えればそれは有価な物質ともいえる.そこで,本研究ではスラグから炭酸溶液中に有価物を抽出分離することを目的とした. 実験には,電気炉の普通鋼およびステンレス鋼溶製時に排出される酸化スラグを用いた.これを二酸化炭素分圧が制御された雰囲気で水溶液に溶出させた.溶出液はICPで分析した. これまでに得られた主な結果を以下にまとめて記す. 1)電気炉普通鋼酸化スラグについて 全般的に見て,カルシウムの溶出量が一番大きく,シリコン,マグネシウム,アルミニウム鉄の順に溶出量は小さくなる.したがって,鉄,マンガンはスラグに残す形で分離できる知見が得られた.空気中での溶出では,環境規制物質は基準以下であったが,ホウ素,フッ素および亜鉛は環境基準に近い値であった.繰り返し溶出を行った結果,それらは溶出回数とともに減少した.二酸化炭素分圧が大きくなると,それらの溶出量も大きくなった.鉄とマンガンの溶出量も二酸化炭素分圧とともには増加した.二酸化炭素分圧が高い条件で溶出させた溶液を空気中で保持すると,白色の沈殿物が生成した後,赤褐色の沈殿物が得られた.溶出した鉄も沈殿を制御することにより,分離できる. 2)電気炉ステンレス鋼酸化スラグについて 空気中での溶出では,環境規制物質のうちクロム,セレン,亜鉛が環境基準をこえたが,繰り返し溶出を行った結果,それらは溶出回数とともに減少した.
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