本研究は、高温での軟化成形プロセスを高度に制御し、マイクロ/ナノ構造を有する新しい光デバイスガラスを創製するとともに、そのフォトニクス機能を評価するものである。 ファイバ線引き法を用いたガラスの伸びおよび縮み速度を利用し、粘度及び表面張力を評価するための測定条件の検討を開始した。使用する特殊電気炉について、内部の温度分布を精度良く測定し、評価に適したファイバ状試料のサイズ(長さと直径)の最適化を行った。 新組成リン酸塩ガラスの熱的特性、光学特性、高温軟化過程での耐結晶化性および耐水性を評価した。同ガラスが耐結晶化性および耐水性に優れ、組成設計により熱的特性や光学特性が制御可能であり、短尺・高出力ファイバレーザーとして優れていることがわかった。 熱インプリント法によりガラスヘマイクロ/ナノパターンを形成するための基礎実験として、モールド候補材とガラスとの接着性の調査を行った。石英ガラス、酸化物セラミックス、CVDダイアモンドなどのモールド候補材とパイレックスガラスとの試験結果から、パイレックスガラスと反応しないモールド材としては、CVDダイアモンドが適していることがわかった。300℃以下のガラス転移温度を有する低温軟化性スズリン酸塩ガラスでは石英ガラスモールドと反応しないことが判明した。石英ガラスのマイクロ/ナノパターンモールドを用い、スズリン酸塩ガラスの熱インプリント条件(温度、圧力、時間)が転写性に及ぼす影響を検討するとともに成形条件の最適化を行い、熱インプリント法によって同ガラスに500nm程度の周期構造を有する微細なパターンを再現性良く転写させることに成功した。
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