本研究では、非鉄製錬で分離回収されたヒ素をスコロダイト形態で固定化するため、スコロダイトの生成機構を科学的に解明し、処理プロセスを構築することを目的とした。 今年度は、ナトリウムの影響を排除するためヒ素源をヒ酸水素二ナトリウムから60%ヒ酸溶液に変更し、オートクレープを用いた種結晶の生成実験と、非晶質ヒ酸鉄の生成と結晶化実験をおこなった。 種結晶の生成実験では、初期As濃度を0.01mol/L、Fe/As比を1.0、pHを1とし、オートクレープで160℃、24h保持して結晶成長させた。生成物はXRD分析でスコロダイトの強いピークが見られ、SEM観察では3~4μmの斜方状の結晶が凝集した30~40μmの粒が確認された。これまでに作ったものに比べ粒径が大きく、結晶面が明確だった。 非晶質ヒ酸鉄は、初期As濃度を0.3mol/L、Fe/As比を1.0、35℃、300rpm、24h撹拌しながら生成させた。生成物のXRDでは、ブロードなピークでありSEM観察では、1μm以下の粒が凝集し多少凹凸が見られた。 種結晶無しと10%、20%添加の結晶化実験を水蒸気飽和雰囲気95℃で6h、24hとおこなった。XRDでは、いずれの条件でも6hでスコロダイトの強いピークが見られ結晶化が確認された。SEM観察で、種結晶無しでは、初期0.5μmの粒が6hで1μmの粒に成長しており、24hで2μmに成長し、表面の凹凸が大きくなった。種結晶を添加した場合、6h、24hで全体が1μm程度の粒となっており、いずれも種結晶の粒は確認できなかった。添加率を変えても、粒の形状、粒径には大きな違いは見られなかった。 種結晶上への結晶成長については確認できなかったものの、水蒸気飽和雰囲気において非晶質ヒ酸鉄が結晶化すること、また種結晶添加により生成物の大きさが影響されることが確認された。
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