本研究で新たに開発した、マイクロプラズマイオン化素子を用いたエアロゾルイオン化装置を用いて、10nm以下のシングルナノ粒子に対するイオン化効率を種々のパラメータを変えて評価するとともに、イオン化装置内部において生じるイオンの輸送現象などの解析を行った。まず、粒径10nm以下の試験ナノ粒子を調整し、本装置に導入することで、粒子の荷電効率を実験的に評価した。装置内部の損失を含めた実質的な荷電効率では、粒径2nmで約20%と、従来報告されている荷電装置よりも高い荷電効率が得られた。しかしながら装置出口での粒子荷電効率は5nmで10%、2nmでは数%以下であり、目標値である2nmで10%を達成することができなかった。そこで、十分なイオン濃度N及びイオンとエアロゾルの混合時間tを得るために、装置構造、イオン化素子形状などを変えて、静電拡散によるイオンの散逸や、荷電粒子の電界による捕捉を低減するための装置改良を行っている。新たに試作したエアロゾル荷電装置およびその荷電効率に関しては、これまでの成果をまとめ、米国エアロゾル学会(AAAR)で口頭発表を行うとともに、J.Aerosol Sci.誌に投稿中である。また、イオン化装置の内部におけるブラウン拡散や静電気力による粒子の捕捉を低減するために、イオン化装置内部におけるナノ粒子の動力学的挙動の解析を試みた。プラズマ素子からのイオンの生成及びその空間分布を計測し、エアロゾルとイオンの輸送・混合過程を解析することで、装置の改良設計に反映させた。また、装置内部の沈着損失を実験的に評価するために、装置の透過率を計測し、5nmの粒子では約半数がブラウン拡散によって装置内壁に沈着損失していることが明らかとなった。今後はこれらの結果をさらなる装置改良に応用していく予定である。
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