マイクロ波援用メカノケミカル処理法を確立するための基礎研究として、マイクロ波加熱固相反応を利用したITO粒子の合成に関する研究を行った、すなわち、マイクロ波感受性の高い酸化インジウムと酸化スズを原料とする粉体層を形成し、これを流動層化しながら、マイクロ波加熱することで固相反応を起こし、ITO粒子の創製を試みた。 その結果、通常の外部ヒーター加熱では反応完了まで12時間以上要するのに対し、本手法では1/30以下の約15分で反応が完了することが確認された。これは、粉体層内で生じるヒートスポットが局所的に固相反応を促進したためであると予想された。 また、粉体層を流動層化することで、反応の進行の不均一性が緩和され、固定層でマイクロ波照射した際の反応率よりも高い反応率を実現できることが明らかとなった。 さらに、マイクロ波照射した際の発熱量は、粉体層の充填率に大きく依存することが明らかとなった。これは、充填率が小さい場合にはマイクロ波が粉体層内部にまで浸透し、外表面だけでなく中心部においても発熱するためであると考えられる。この考え方を基に、粉体層充填率と粉体層の比表面積の関係と粉体層内の温度分布を実測し、熱伝導方程式から発熱量を算出することで、マイクロ波照射時の粉体層の発熱量を推算する手法を確立した。 以上の研究結果から、粉体層の充填率を低く抑えながら粉体層を攪拌・混合し、マイクロ波を照射することで、非常に短時間で高性能・高電気電導率を有するITO粒子の創製に成功した。
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