電場に応答する機能とテンプレート分子を認識するフラグメントを適切に選択すれば、従来のモレキュラーインプリントの欠点とされるテンプレートの溶脱も電場刺激により簡便かつ完全に溶脱でき(電場による刺激で特定のコンホメーションを自由自在に変化させる)、タンパク質のように環境に応じて分子認識能を変化させる画期的な環境応答型高分子デバイスの開発が実現できると期待される。本研究では、分子インプリントの概念と電場に応答する機能性素子との組み合わせにより新しい分子認識ミクロスフェアを調製し、分離が極めて困難とされる光学異性体をモデル分離対象として適用し、本手法の普遍性を証明することを目的とする。本年度は、分子インプリント法を用いた電場応答性分子認識ミクロスフェアの調製及び特性評価に関する研究開発を行う。前年度までに合成した分子認識素子を用いて、光学活性物質であるアミノ酸誘導体をテンプレートとした分子インプリント法により電場応答性分子認識ミクロスフェアを調製した。認識ターゲットを刷り込む段階では、合成したモノマーとエチレングリコールジメタクリレートとIn situ重合を採用した。調製したミクロスフェアの吸着挙動および脱着挙動にかんする性能評価は、任意に電場をかけることにより分子を記憶した三次元的空洞がどのように相分離し、認識ターゲットを取り込んでいるかで評価した。さらに、走査型顕微鏡や光学顕微鏡による形態観察を行い、調製条件にともなう表面形態を特徴付けた。より分子認識能を評価するためにテンプレートした対象物質あるいは対象物質と構造の異なる参照物質を作成したミクロスフェアに吸着させ、分離能力を定量的に評価した。また、透光量測定を行うことで、分光学的に吸着・脱着挙動の評価を試みた。
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