今年度はとくに、我々の研究グループで開発した脱水用途の新規親水性ゼオライト膜(チャバサイト膜、CHA)についてイオン交換の効果を検討し、ゼオライトケージ中のカチオンのサイズとゼオライト膜の性能、ならびに劣化挙動との相関を整理した。具体的には、はじめにカリウムイオンを用いてCHA膜を調整し、のちにイオン交換法によりMg、Ca、Sr、Ba等のカチオンを導入してゼオライト膜を調製した。のち浸透気化法(パーベーパレーション)法により水=アルコールの溶液から脱水を行うことでゼオライト膜の分離能ならびに透過流束の評価を行った。 その結果、カチオンイオンのサイズが小さくなることによって流束が増大することがわかった。さらに、別にこれまでに開発してきたマーリノアイト膜、フィリップサイト膜との比較検討したところ、これらの膜に比べて水の透過流束に優れた膜になることがわかった。含酸溶液からの脱水においても、アルコール脱水に比べて膜の安定性や分離選択性は劣るものの、有機プロセスを扱ううえで良好な膜となることがわかった。この場合、膜の劣化要因は主にはイオン交換であるため、脱離した金属イオンを含む溶液に接触させることにより再生可能である。検討過程においてこのような脱水性能の他用途へ(無機水溶液中の成分濃縮や、過酸化物濃縮など)への展開が可能であることを見いだしたため、今後これらへの適用をさらに検討していく予定である。
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