すすの前駆体となるPAHの燃焼中の成長過程に関して、その重要なサブセットを構成すると考えられる、トルエン、トルエン+アセチレン、トルエン+ベンゼンの混合気体の熱分解によるモデル実験の結果をもとに、.これらを再現する、化学反応モデルの構築と検討を行った。(1)量子化学計算による、典型的な反応機構の検討:量子化学計算により、比較的小さなPAH分子のPAC(フェニル付加・環化反応)およびHACA(水素引抜・C2H2付加)反応過程の遷移状態を探索し、その反応の妥当性を検討した。その結果、水素引抜反応とC2H2付加反応は比較的小さな障壁を経由して容易に進行することがわかり、フェニル付加反応についても、すすの生成の温度領域では十分に可能な高さの障壁を経由して進行することがわかった。また分子内の環化反応については、6員環の生成は極めて容易におこり、5員環の生成も十分に可能であることがわかったが、4員環の生成は事実上起こらないことが推定された。(2)反応機構の構築と検証:量子化学計算から得られた情報から評価された反応速度定数、および他の手法による推定値を元に、第一次反応機構を構築し、反応計算により、モデル実験の再現を試みた。その結果、モデル実験の主要な生成物に関しそは概ね、その様子を再現することができるものの、反応速度および、反応機構により詳細な検討が必要であることが明らかになった。また、これらを元に、系統的なPAH生成とその酸化反応モデルの構築の方針を決定した。
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