研究概要 |
マイクロ波照射場で,ピコ秒の時間分解能で蛍光寿命を測定できる体系を組上げた。この装置を用いて,蛍光プローブ分子の回転運動に及ぼすマイクロ波照射の影響を検討した。溶媒としてはグリセリン/メタノールの混合溶媒を用いた。マイクロ波照射により溶液の温度が上昇したので,マイクロ波の電場のみによる効果を抽出するために,通常加熱により同様の温度での測定も行なった。プローブ分子としてクマリン153を用いた。混合溶媒系での蛍光強度の減衰は,3つの指数関数の和でフィッティングされた。つまり,プローブ分子の回転モードとして少なくとも2つの運動モードが存在することが示唆された。それぞれの回転運動の時定数の逆数,つまり回転速度(k1よびk2)の温度依存性を検討し,それらの活性化エネルギーを求めた。回転速度の活性化エネルギーは,マイクロ波照射場では小さくなることが分かった。つまり,マイクロ波照射場では,プローブ分子の回転が容易であることがわかった。また,分子の回転運動の流体力学的近似モデルをもとに考えると,回転運動が容易になる理由は,プローブ分子周囲の微視的粘度がバルクの粘度よりも小さいか,微視的温度がバルク温度より高いことが示唆された。
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