研究代表者は、有機分子で修飾した酸化物ナノ粒子の合成、さらに修飾分子の性質を利用したナノ粒子の分散・複合化に成功している。この成果をもとに本研究では、酸化物ナノ粒子を利用した電子デバイスの実現を目指している。本年度は、昨年度までのZnOを用いたn型トランジスタに加え、p型トランジスタの実現に取り組むとともに、表面修飾酸化物ナノ粒子が規則的に複合化するメカニズムの解明を行った。 1)NiOナノ粒子の堆積によるp型トランジスタの形成 流通式合成装置を用いてNiOナノ粒子の合成を行った。次に、合成したNiOナノ粒子をボトムゲート基板上に滴下、乾燥させた堆積膜を形成した。その構造を二次電子顕微鏡、X線回折で評価するとともに、電気特性を評価した。その結果、合成したNiOナノ粒子は厚さ10~20nm程度、幅100nm程度の平板状の形状を有し、良い結晶性を示すことが明らかとなった。さらに、デバイス特性測定装置を用いて電気特性を評価したところ、この堆積膜構造が電解効果型トランジスタのp型のチャネル材料として動作することを確認した。 2)表面修飾による配向化、堆積条件の最適化 平成20年度に引き続き、ナノ粒子の配向配列を実現する条件の探索を行った。研究代表者はこれまでに、有機分子存在下でナノ粒子を合成することで、正8面体の酸化セリウムナノ結晶が向きを揃えて規則的に配列することを明らかにしている。そこで、ナノ粒子の配列を制御する要因を明らかにするため、酸化セリウムの規則配列構造の解明を行った。電子顕微鏡を用いた解析の結果、規則配列構造を構成する正8面体のナノ結晶は、ほぼ同じ向きを向いていることが明らかとなり、面と面を接した配列、ないし、稜と稜を接して配列されていることが明らかとなった。
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