研究概要 |
Baeyer-Villiger酸化反応は,酸化剤存在下,酸触媒反応で進行する。本年度は,酸触媒としてゼオライトであるβ型ゼオライトを用いて反応を実施した。酸化剤には環境負荷の極めて小さい過酸化水素水を使用した。反応はほぼ室温(300K),常圧下で行った。β型ゼオライトの酸触媒機能と活性選択性との関連を詳細に検討するために,アルカリ金属イオンによるプロトンサイトのイオン交換およびゼオライト合成時の仕込Si/Al比の異なる触媒について検討した。また,他の酸強度分布の異なるゼオライト触媒についても検討した。ゼオライトの種類によって酸強度が変化し,強度の最も強いモルデナイトからZSM-5,Y型ゼオライト,β型ゼオライトの順に減少する。その中で最も酸強度の弱いβ型ゼオライトが目的生成物の環状エステルの収率,選択率が高く,比較的弱い酸点が反応に有効であることがわかった。また,酸を全く含まないシリカや非晶質シリカ・アルミナでも活性が低かった。β型ゼオライトのプロトン量を変化させるとプロトン量に依存して生成物が増加した。一方,過酸化水素は,BV酸化反応に消費されるだけでなく,自己分解も起こす。環状エステル生成に消費された過酸化水素の割合を有効利用率と定義し,酸強度,酸量の影響を調べた。β型ゼオライトの内,Al量の少ないゼオライトで高い過酸化水素利用率が得られた。酸強度が高く,酸量も多い場合は,生成した環状エステル(あるいは脱離前のエステル前駆体)が開環しヒドロキシカルボン酸や重合生成物が生成しやすいと考えられる。過酸化水素を用いる不均一系BV酸化反応には,最適な酸触媒のデザインが必要であることが示された。
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