研究概要 |
(1)アンモニアIRMS-TPD法の確立 通常のゼオライトについてはアンモニア吸着前後の差スペクトルの温度変化からアンモニア脱離速度を算出できたが,アルカリ土類含有ゼオライトではフェルミ共鳴が変角バンドの一部に重なり,正確な計算ができなかった.吸着後100℃のスペクトルからの変化を定量することで正確な定量ができることを見出し,簡便で正確な計算方法を確立した,これによって各種ゼオライトの酸性OH基のブレンステッド酸強度を直接測定できるようになった. (2)酸点構造の決定 EDTA-USYゼオライトの骨格外A1の位置が特定され,カチオンサイトPに位置する(A10H)^<2+>によって隣接するブレンステッド酸点が強められることが明らかとなった.通常の酸点と合わせ,各種ゼオライトの酸点の構造が明らかとなった. (3)量子化学計算 クラスターモデルを仮定し,GGA近似を行うとアンモニア吸着エネルギーの測定値と計算値がほぼ一致した.周期境界条件でも一致したが,これはFAUなど限られた構造でしか使えないこともわかった. (4)触媒活性と酸強度の相関 オクタンとヘキサンの分解活性を高温低圧で測定し,その温度変化から活性化エネルギーを求めたところ,アンモニア吸着熱に対して一次の関係にあり,アンモニア吸着熱が高いほど活性化エネルギーが低いことを見出した.また量子化学計算によって,活性化エネルギーはカルボニウムカチオンの生成エネルギーとほぼ等しいこと,カルボニウムカチオンの生成エネルギーは脱プロトン化エネルギーと平行な関係にあることもわかった.これらのことから,アルカン分解の律速段階は酸点によるアルカンのプロトン化で,この速度はブレンステッド酸強度によってもっぱら制御されていると考えられる.
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